アファンの森とは

アファンの森のヒストリー

アファンの森が生まれるまで

日本は美しい森にあふれていました

世界中の自然を観てきたC.W.ニコル。
北には流氷、南にはサンゴ礁と、世界でもっとも生物の多様性に富んだ風土を持つ国は、日本だと言います。

そこに住む人々は、自然を愛する繊細な文化を持っていましたが、残念なことに、高度経済成長期以降、経済の発展のためにその自然の素晴らしさに背を向けるようになります。樹齢400年以上のナラ、ブナ、トチなどの大木が一瞬にして切り倒され、スギやカラマツの人工林になってしまいました。

人間の都合のいいようにつくりかえられてしまった森は、野生動植物を育んだり、水をきれいにしたり、土をつくったりす森本来の力を失っていきました。

  • 伐採されてしまった原生林

  • 放置され、もやしのように生えているスギ植林地

しかもその人工林された森が、またもや経済的な理由で放置され、今や荒れ果てています。

食べ物を失った野生動物たちは、里に下りて農作物を荒らさざるを得なくなり、絶滅の危機に危ぶまれるツキノワグマさえ、里におりてくれば害獣として打ち殺されてしまうのです。

森を再生したい!その思いから「アファンの森」が生まれました

一見緑に覆われているように見えながら、生態系としてのバランスを崩してしまった日本の森をなんとかしたい。
美しかった本来の日本の森に戻したい。

そんな気持ちが高まっていたころ、C・Wニコルは、自分の故郷のウェールズで、石炭の採掘とその後の廃坑のために荒れ果てていた森が、緑を回復しようとする人たちの運動によって、みごとによみがえったことを知ります。

  • 廃坑当時の英国ウェールズのアファン森林公園
    採掘のため木々は皆伐され、
    ボタ(石炭かす)で覆われたはげ山になっている

  • 人々の努力によって、森が取り戻されている現在
    左の写真とほぼ同じエリアです

森は甦ることを教えてもらったウェールズの"アファンの森林公園"。アファンとはウェールズ語で"風の通るところ"。ニコルは、日本で森を甦らせることを決意します。

よみがえったアファンの森

「幽霊森」に手を入れる

ニコルが居を構えた長野県黒姫。戦前、周辺の原生林はすべて伐られ、スギやヒノキの人工林となっていた国有林は戦後民間に払い下げられ、農地や里山として開墾されました。しかし雪も多く寒 さの厳しい自然環境のこの土地は、農地には向かず、わずかに薪炭林として利用されていたものの、その後の高度経済成長の波により、石油や電気中心のライフスタイルに変わると、次第に山は放置されていきました。約40年以上にわたり放置されたこの場所を地元では「幽霊森」と呼んでいました。

  • 長野県 黒姫の森

  • 幽霊森。
    ササ、ヤブの類が生い茂り地面まで光りが届かない

ウェールズのアファンの森が、炭坑の廃山から元の緑の谷に戻ったように、「幽霊森」を再び命が溢れる日本の森に甦らせたい。

そう行動を起こしたのは1986年。地元の林業家松木信義の力を借りて、荒れ放題だった森の間伐を行い、一本一本に養分が行き渡り、充分な陽の光が当たる ようにしました。丈夫で、まっすぐな木が育つようにするためです。小鳥たちが好んで巣を作る茂みだけを残して、地面を覆う笹や薮をはらいます。風通しをよ くし、地面まで日光が届くようにすれば、そこにはさまざまな花や若木が育ちます。木々に絡みついて枯らしてしまうツル植物は丹念に切り払いました。ただ し、ヤマブドウやアケビ、サルナシなど、クマや鳥たちの好きな実がなるものは残すようにしました。

勇気をもらった故郷の森に因んで、黒姫のこの森を「アファンの森」と名付けました。

かえってきた森の住人

森には、多くの生き物達がかえってきました。賑やかなさえずりを聴かせてくれる鳥たちは93種類以上、昆虫は1000種類以上。そしてツキノワグマの親子が木登りの練習にきたり、大好物のハチミツを食べにきています。
さまざまな植物、菌類、そして昆虫や両生類たち、全ての生き物がバランスを保ちつつ「生命の環」で結ばれている、森のもつ本来の力をアファンの森が語ってくれています。

今では、長野県で絶滅の恐れのある種、30種が確認されています。

アファンの森では、いままで放置された里山の再生活動を基本に、保全・管理することで、その地域で生息していた様々な野生生物が生息できる森に再生することを目指すと同時に、その多様性あふれる森で、子ども達の未来の心、人の心も育んでいきたいと考えています。

よみがえったこの豊かな森が、少しずつでも広がっていきながらずっと維持されていくこと、「森はよみがえる!」というアファンの森からのメッセージが日本中に広く伝わり、たくさんある荒れ果てた森を生き返らせ、森と人とが共生できる世の中にしていきたいと考えています。