森を甦らせる 人工林(国有林)での試み

 日本の森を救え
C.W.ニコルが、日本の森を守る活動を始めたきっかけとなったのは、林野庁による天然林の伐採を目の当たりにしたことでした。1980年以降、国有林のブナやカシの原生林が林野庁によって皆伐されている実態を全国各地調査したニコルは、憤りを感じ1987年2月に林野庁長官に公開質問状を朝日新聞に投稿しました。

 「どうして残り少ない天然林を伐採し、スギを植えるのか」と。
わたし達の森づくりは、この問題が原点となっています。

日本の人工林

 戦後の日本は復興のために木材需要が急増しました。しかし、戦時中の乱伐のため供給が追い付かず、国は造林を急速に行うために、大規模な拡大造林を進めました。拡大造林とは伐採跡地をはじめ、里山や天然林を伐採して代わりにスギ・ヒノキ・カラマツなどの経済的に価値が高く建築用材として利用しやすい針葉樹の人工林に置き換えることです。

 そして、木が成長するまでの木材需要を補うべく木材輸入の自由化が始まります。値段の安い輸入材に押され、国産材の価格は落ち続け、日本の林業経営は苦しくなり、手入れを行っても採算が取れないため、大量な人工林が放置されたままになっています。

アファンの森と国有林(人工林)

 アファンの森に隣接する国有林も、手入れ不足のスギ林が多くを占めています。
木が混みあい枯死木が発生し、太さも不揃いな、下草も無く限られたものしか生きられない暗い森です。

 アファンの森づくりをこの国有林に拡大する為に、2012年3月アファンの森財団は、中部森林管理局北信森林管理署と協定を結び、隣接する国有林約27haを「森林o林業再生モデル林」と名付け借り受けることになりました。そして、この人工林問題の解決策を探るために、信濃町、長野県、北信森林管理署、中部森林管理局、長野森林組合、東京環境工科専門学校、日本に健全な森を作り直す委員会に参画してもらい「黒姫森づくり協議会」を立ち上げ、上質な木材を生産しながら生物多様性を高めるために検討を重ね、整備を始めています。

  • 間伐前の人工林

  • 間伐後の人工林

 まず国有林の植生調査を行い、現在の森の状態を把握し、施行計画をたてました。大型の林業機械を入れることなく丁寧に間伐を行い、搬出は馬(馬搬)によって行いました。

 馬搬は林道の整備も必要なく、森に大きな負担をかける重機も不要です。環境に負荷を与えることなく地形が急峻な森でも実施できます。日本のような小規模林業に適した、自然環境にも配慮した伝統的な技術です。

 今、日本の林業は高性能機械を活用するために林道の整備や森林の集約化が主流とされていますが、馬搬は今後の林業のもう一つの形であると、アファンでは捉えています。

 そして、もう一つの問題が、放置の末、価値の下がったスギの間伐材をどうするかです。経済林として植えられたにも関わらず手間をかけて伐り出した材が、利用されないことが悪循環を招いています。「利用しなければ意味がない」ニコルの熱い想いに、オフィシャルスポンサーである株式会社岡村製作所様が社会的意義を感じてくださり、難しいスギの間伐材を見事に家具として製品化に導いてくださいました。

 そして誕生したのが、ホースロギングファニチャー「KURA」と「trot」です。 この家具には「馬搬の振興により人工林も再生させて日本の森を元気にしたい」というメッセージが込められています。

  • KURA

  • trot table

人工林の可能性

 間伐は、間引きを行いそれぞれの木に太陽光と空間を与えることにより成長を促し、森を健全な状態に保ちながら生産目標を達成するために行う手段ですが、間伐の効果というものが実は他の生きものたちにも影響してきていることが具体的にわかってきました。

 人工林の生物多様性についての研究はあまり進んでいない状況です。
 スギ林を間伐すれば、下層植生が豊富になり、そこに来る昆虫も増えることがわかりました。きわめて貧弱であると思われたスギ林から、多くの植物が出現し、植物と昆虫のリンクが回復したことは驚くべきことです。これは隣接するアファンの森の多様な群落から、種子が供給され、それらが土壌の中に眠っていた可能性が考えられます。間伐を行い照度、温度が好転したことにより、バイオマス指数(被度と高さの積)はスギ林で708.8だったのに対して間伐1年目は1,175、2年目には56,703と大幅に増加しました。(望月・高槻2014)

人工林も適切に管理を行えば、木材生産のみならず生物多様性などの森林の持つ環境保全機能に対しても有効であると言えます。 日本の森の4割を占める人工林が、再び経済と生物多様性の両方を兼ね備えた森へと甦えること目指して、様々の取り組みを少しずつ実践して行きたいと思っています。

写真:麻布大学 野生動物学研究室