2009年3月
![]()
ミソサザイ
Winter Wren
3月の調査は、これまでと明らかに違う点がありました。
それはさえずっている鳥が増えたこと。
特にミソサザイという鳥の「ツピシツルルルスピスピ...」と複雑ながら軽快にリズムを刻む高い声が森のあちこちで力強く響いていました。
アファンには一年中いる鳥ですが、冬枯れから少しずつ春色に変わるこの季節の景色の中で声を聞くのが好きですね。
ふと、頬を伝う森の風が温かくなるように感じます。
大きなミソサザイの声ですが、この鳥の体長はたった10cm程度の手のひらサイズ。
しかも尾を立てているので数字よりも実際は小さく見えます。
しかし、春の訪れを全身で表現する命の輝きは十分持ち合わせている、私の大好きな鳥の一つです。
大きな声で鳴くので、性格も大胆かと思いきや、その小さな体で沢沿いの石や木の根本の周り、茂みの中をちょこまかと動きまわりますので、森を歩いているときに観察するのはちょっと難しい鳥。
姿をしっかり見たいのであれば、人の手による森作りをしているアファンならではの観察方法があります。
それはソダのそばで待つ方法です。
アファンでは森の整備活動のひとつで除間伐など木を伐採しますが、伐採した木の細かい枝などはそのまま放置せず、森の中にまとめて置いていて、それが「ソダ」です。
そこはミソサザイの食物である虫たちがたくさん隠れ家として利用もしています。
つまり、ミソサザイにとっては格好のレストランというわけ。
少し距離をおいてじっと待っていれば、そのうちミソサザイのほうからやってきて姿を楽しませてくれるのです。
森を長年管理をしている松木さんにはソダがミソサザイのレストランになっていることは当たり前のことかもしれません。
しかし、実はこれは人の生活が雑木林と切り離されてしまった現在では貴重な風景とも言える気がします。
人の手が入らなくなり、森の中が笹で覆われてしまった場所では失われてしまったと生き物と人の関係が、ここアファンではよみがえっています。
そんなことが嬉しくてたまらないヒヨ吉です。
(ヒヨ吉)
ソダで食物を探すミソサザイ
撮影:ヒヨ吉
(写真をクリックすると大きくなります。)
...............
ヒヨ吉さん
現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。
3月9日の森の様子です。雪はまだありますが、森は冬から春への移行期間です
3月の森の地面はところどころ穴が開いたように雪解けが始まっています。雪は水のある水路や湿地、木の周りからとけていきます。そして空からは小鳥のさえずりがすでに聞こえてきています。冬の小鳥たちは主にシジュウカラなどのカラ類が種類を超えて「混群」と呼ばれる群れを作るのですが、この日は、混群でありながら春のコーラスをしていました。鳥たちもいわゆる婚活の季節に入ったようです。ペアが決まれば群れを離れて巣作りをはじめるのでしょうか。
水路に架かる橋です。日差しの関係でしょうか、片側だけたくさん雪が溶けているのがわかります。
11月末に泥をかき出した弥生池ですが、現在も泥を固めるために水を抜いた状態です。
雪の上に細かいものが落ちていました。よく見ると冬芽の皮のようです。鳥がふくらんできた冬芽をついばんだものでしょうか。そういえばこないだヒヨ吉さんが撮って送って頂いた写真のウソは何かくわえていました。これかもしれませんね。
雪が解けた地面にはコロコロしたうさぎのふんが転がっていました。わずかに生えてきている緑を探して雪が解けた地面から地面へ移動しているのでしょう。
この時期は人だけではなく動物たちも食べ物を求めて春探しをしているようです。
小川にはネズミが食べたあとのクルミの殻が転がっていました。冬の間、雪が溶けて空間ができやすい小川の脇で、蓄えていたクルミをかじっていたノネズミの姿が思い浮かぶようですね。
杉林を歩くとカケスの羽根がおちていました。
まだまだ雪と枯葉色のモノトーンの森なので鮮やかな色は目を引きます。
カケス自体はカラスの仲間でさほど派手な鳥という印象はないのですが、羽の一部分に入っているこの青い色はやはり拾って持って帰りたくなります。
動物たちは冬の森でも活動を続けていますが、植物たちはどうしているでしょう。これはつる草の種がぶら下がっているものです。枯れてはいますが、ドライフラワーのようで冬の森の素敵なインテリアになっています。
緑を探すとありました。雪の上に島のようにふさふさしたコケが顔を出しています。
やはり緑を見つけると安心しますね。
これは地面ではなく、太い枝を切ったあとです。根元から2つに分かれていた木の片方を伐って、もう片方の木を太く育てようとアファンの森を整備した初期に松木さんが伐ったものでしょう。この木は今は人が二人で抱えるほど大きな木に育っています。コケやキノコ、上の方にはスミレの葉まで出ています。木が大きくなるにつれて周りが盛り上がって、この木が巨木になる頃には切断面は飲み込まれて木の中に入ってしまいますが、それはまだ何十年も先の話でしょうね。
雪が解けたところからフキノトウが顔を出しています。これこそ間違いなく春のしるし。加えて春の恵みですね。3月いっぱいはまだ雪がありますが、森の住人は春の活動を始めています。
アファンの森は再生途中のまだ若い森なので、老木などの木の穴を利用する小鳥たちのために、また、アファンで繁殖する小鳥を調査するために巣箱をかけています。今年も繁殖期の前の小鳥の巣箱掃除を行いました。
巣箱に入るのは小鳥ばかりではありません。これはキイロスズメバチでしょうか。立派なハチの巣ができていました。繁殖期に一度どんな鳥が入っているのか巣箱をのぞかせてもらうのですが、これはぶんぶん音がしていたので開けなかった巣箱です。開けていたら大変なことになっていたところでした。
この巣箱は鳥が利用していたようですが1種類だけではないようです。一番最初は木の皮が重ねられていたのでゴジュウカラが使ったようです。そしてそのあと、苔を使った巣が重ねられていたのでほかのシジュウカラなどのカラ類が入ったようですね。そして、広げられた巣穴。これはアオゲラというキツツキの仕業だと思われます。繁殖期以外に人家の木の壁にも穴をあける鳥ですが、なぜこんなことをするのかは不明です・・人にとっては迷惑なイタズラですが、理由を知っている方がいたらご一報ください。そしてこの巣箱は作りなおしとなります。
巣箱の中には忘れものもあります。小鳥の卵です。イースターの卵のように、下のほうに小さな穴があって中身はありませんでした。卵が巣に残っていることは珍しいので、なぜ残っているのか、想像すると興味深いです。
巣箱をあけるとふたのところに小さなハチの巣が。巣箱の中からみると天井に下げられたランプのようですね。
この巣箱は小鳥が巣として使っていたようで、巣材が入っていましたが、爬虫類の卵のようなものも入っていました。もしヘビの卵だったらなにか繁殖期にすごいドラマがありそうですね。
この巣箱にも苔の巣材が入っていましたが、それをとると下にいたのはテントウムシでした。ふかふかの布団の下で越冬していたようです。まだ起きるには寒い季節ですね。
私は専門家ではないので、どんな生き物がどのように巣箱を使っていたのかというのは正確に判断はできませんが、落ち葉が敷き詰められていた巣箱など、小鳥の繁殖用に作った巣箱が鳥のほかにもネズミなどの哺乳類、ハチやテントウムシなどの昆虫、そして爬虫類など、すべての季節に何らかの生きものが入れ替わり立ち替わり利用している様子がうかがえました。ちなみにダニも毎年使っているようで、私の左腕は今回も6か所の虫刺さされを記録しました。
今年もどんな生きものが利用してくれるのか楽しみです。
"心の森"プロジェクトの写真集が発売されます!
『聞えるかい森の声 -アファンの森-』
B5 版 上製本 120 頁・オールカラー
定価 1,995 円(税込)
発売元 ランダムハウス講談社
日本アムウェイのOne by One こども基金と私達が協働で実施している「アファン"心の森"プロジェクト」に参加した盲学校のこども達の様子を、土門拳賞受賞の写真家 管洋志さんが撮影した写真をまとめたものです。
はちきれんばかりの感覚で、森を縦横無尽に歩き回り、自然と、友達と、達人たちと触れ合うことにより見せてくれた、心穏やかなこども達の表情をご覧ください。
管 洋志さん (巻末から抜粋)
・・・・アファンの森に集う、盲学校に通う子どもたちと、よく遊んだ。時に潤い豊かな感性を羨ましく感じたりした。森の中をキョンキョンと歩く姿に逞しい生きる力さえ感じた。そんな姿を撮影しているうちに、記録係のはずが、いつの間にか、子ども達の底知れぬ力を表現したくなった。
C.W. ニコルさん (巻末から抜粋)
・・・・管さんのカメラを通して私たちは、時間を超えた、自由で生命ある虫取り網に捉えられた愛らしい蝶のように、笑い声が森に戻って来る様子や、子どもたちが大人を信頼しともに楽しく過ごすことを改めて学びなおす様子を捉えることができたのです。
![]()
ウソ
Bullfinch
アファンの森の中には、真冬でも凍ることのない湧水が源となっているいくつかの小さな流れがあります。その側を通るとき、不意に数羽の小鳥がフワフワと舞い上がり、まるで口笛で「フィ、フィ」と吹いたような声で鳴きながら、近くの木に止まることがよくあります。
双眼鏡で観察すると、黒いベレー帽をかぶったように頭が黒く、ほっぺが赤いのが目に入ってきます。ウソという鳥です。夏の間は高い山で子育てをし、アファンには冬の間やってきます。日本を始め、ロシアからユーラシア大陸、そしてニコルさんの生まれた英国にも棲んでいます。
以前、ニコルさんとアファンの鳥の話をしたとき、「僕はウソが本当に大好きなんだよ」と言っておられましたが、英国に3年滞在していた経験がある私にとっても両方の国で観察できるウソは大好きな鳥の一つとなっていますので、その意味は理解できます。
ところでこのウソ、名前がちょっと変わっていますよね。でも名前の由来は「嘘」ではなく、昔は口笛のことを「オソ」といってそれがなまったものだと言われています。
また、このウソは地域によって羽の色が違いがあり、胸の部分がほんのり赤い「アカウソ」や胸の色がほっぺと同じくらい鮮やかに赤い「ベニバラウソ」と呼ばれるものがいます。英国ではこのベニバラウソがいて、「真っ赤なウソ」と英語圏で言っても「本当」という意味になるので注意が必要です。
...
な~んて、それはヒヨ吉の大嘘です。ごめんなさい。ちょっと調子に乗り過ぎましたね。
(ヒヨ吉)
...............
ヒヨ吉さん
現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。




