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アファンの森は今


『ウェールズ、いろとりどり』 その15 ~公園長リチャードさんの退職~

2011年3月30日。

この日は私にとって忘れられない日となりました。

 

1974年からこの日までウェールズ・アファン森林公園で仕事をし、ニコルさんの黒姫・アファンとの姉妹森締結で尽力された公園長のリチャードさんの早期退職の日となったからです。 

退職祝い品の贈呈(中央の白い服を来ているのがリチャードさん)

 

 

 

 

写真:退職祝い品の贈呈
(中央の白い服を来ているのがリチャードさん)

 

 

英国在来種のナラの木の苗木も記念樹も贈られました

 

 

 

 

写真:
英国在来種のナラの木の苗木も記念樹も贈られました

 

 

当日は記念昼食会がビジターセンターの広間で開かれたのですが、会場は、もうこれ以上は入れないくらいの人が集まりました。

会場は、もうこれ以上は入れないくらいの人が集まりましたアファン森林公園のあるポートタルボット市職員や森林局、観光局の皆さんを始め、ボランティアレンジャーの方々、併設している炭坑博物館の学芸員たちとサポーターの皆さん、地元警察官、アファンの谷の学校関係者、アーティストなど…。

挙げればきりがないほど、本当に、本当にたくさんの人が代わる代わるやってきては、彼に感謝と退職する淋しさを言葉にしていました。

 

 

この公園でリチャードさんが長年積み上げてきたもの。それは、この日に集まった人たちの笑顔を見れば深く理解できました。

彼はいくつもの苦難を乗り越えながら、地域と密接につながりのある「ウェールズ・アファン森林公園」を育ててきたことでしょう。

 

私が2010年5月に下見のために初めてウェールズ・アファン森林公園を訪問したときも、彼は私をこの地域のたくさんの人に紹介してくれました。

私がどういう経緯で長期滞在し、何をするのかを、行く先々で一人ずつ丁寧に解説してくれました。

 

事務所でのリチャードさん以前、3年の英国留学経験があるとはいえ、文化と言葉がまったく異なるウェールズですので不安がいっぱいでしたが、この公園と地域とのつながりの深さを実感し、“ここでならやれる”という判断が早く出せたのは、やはり彼のおかげです。

 

 

  

写真:事務所でのリチャードさん

 

 

 

2010年の秋以降、彼のそばで鳥を観察して絵を描き続ける作業を続けていましたが、それは彼がいたことによる安心感があったからこそだと思っています。

毎朝、誰よりも早くビジターセンターに来てカフェのボイラーをつけ、職員たちとのミィーティング用に温かい飲み物を準備していました。

受付にいるときには誰にでも気軽に声をかけていましたし、次々に起こる公園内の予想外のトラブルにもテキパキと対応していました。

その合間をぬって、車のない私の食料買い出しに何度も街まで送り迎えをしてくれました。

散策路沿いの水路補修を指示するリチャードさん多くのレンジャーたちの仕事を管理しながら、私の絵の進行状況の確認のほか、毎日長距離の山歩きをしている私に疲れはたまってないか、いい鳥には出会えたかと、いつも気にかけてくれました。

 

 

 

 

写真:散策路沿いの水路補修を指示するリチャードさん

 

 

アファンの谷の川縁そのリチャードさんが、これからはもういないのです。私にとって、それはとても淋しく、つらいことです。

しかし、早期退職をすることを職員に正式に告げた日に彼は私を連れ出し、アファンの谷の川縁のベンチに座りながら語ってくれた話がこれからの支えになることでしょう。

 

 

 

 

 

 

「森の時間は人間の一生の時間とはまったく違う長さで考えるべきなんだ。だから私がここを去っても、この公園に森がある限りは何も問題はないんだよ。」

そして彼はこう続けました。

「一度壊してしまった森の復元は並大抵の努力ではできないし、一つの世代や一人でできるものでもない。私はもう歳だし、ニコルさんも若い頃とは違う。私とニコルさんの世代は“森を育てる時代”の人間で、君のような若い世代は“森を受け継ぐ時代”の人間だと私は思っている。」 

春の緑をまとうウェールズ・アファンの森さらに、

「君は、このウェールズ・アファンとニコルさんの黒姫・アファンという、2つの“再生森林”を実際に歩いた若い世代での貴重な人間だ。これから君がこの2つの森の鳥を通して伝えていくメッセージは、すべての人間にとって大事になっていくだろう。ニコルさんが君に会えたことは幸運だと思うし、実は私もそう思っている。君が今ここに来ていることは、ここでの誇りある仕事として私に刻まれているんだよ。」

 

写真:春の緑をまとうウェールズ・アファンの森

 

 

私が今、ウェールズで鳥の絵を描いていること。

それがリチャードさんにとって誇りとなっていると言うのです。

 

小さな頃から野鳥が好きで、鳥の絵を描くこと好きで、鳥を描くために山歩きばかりしてきた私。

そのために、いろいろ遠回りをしてきた人生ですが、リチャードさんからこの言葉を聞いて本当にうれしくて、今まで歩んできた道が決して遠回りではなく、必要なものであったのだろうと思えるようになりました。

 

 

30日の朝は久しぶりに雨でした。

けれど、帰るときには太陽がまぶしく輝いていました。きっとアファンの森が、最初は泣いていたけれど最後は笑って見送りたいと思ったのでしょう。

リチャードさん、本当にありがとうございました。そして、これからも人生の先輩としていろいろ教えてください。よろしくお願いします。

右から地元劇団員さん、リチャードさん、森林公園レンジャーのニックさん、そして私

 

 

 

 

写真:右から地元劇団員さん、リチャードさん、森林公園レンジャーのニックさん、そして私

 

(ヒヨ吉)

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ヒヨ吉さん

現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。
現在、日英で楽しめる「鳥の本」を製作するために、ウェールズのアファンの森へ出張中。

 

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